会長挨拶

年頭挨拶（賀詞交歓会挨拶から）

新年あけましておめでとうございます。旧年中は、本会の運営に皆様のご支援とご協力を賜り、心より御礼申し上げます。本年も変わらぬご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。

2019年を振り返りますと、まず天皇陛下のご退位と皇太子殿下のご即位、そして年号が令和と改まるという国民的行事がございました。私自身一国民として、各国の要人を迎えた一連の慶祝行事が祝賀ムードに包まれたなか概ねつつがなく行われたことを大変喜ばしく思いましたが、一方で台風被害の影響で祝賀パレードが延期になった一件は、昨今の気候変動の脅威の増大を象徴するものとして感じずにはいられませんでした。政府や地方自治体も災害ハザードマップの見直し等対策を進めておりますが、我々企業人としては、天災や異常気象等に備えた事業継続計画の整備や見直し、改訂される災害ハザードマップへの対応などを進めて行く必要がございます。産業全体としてサプライチェーンの維持強化に努める必要性がますます高まっていることを認識すると共に、CO2削減やSDGs（エスディージーズ、持続可能な開発目標）等、我々の企業活動は今や否応なく環境対応を迫られていることを強く感じている次第でございます。

また、国際情勢においては、米中２大国の衝突が貿易摩擦に留まらず、情報機器の輸出入や知的財産権を巡る確執にも波及しており、加えて英国のEU離脱を巡る混迷等、以前にも増して不透明感が漂う状況となっております。今年はアメリカ大統領選の年ですが、米中貿易摩擦が収束に向かう等、不透明感が早期に払拭されることを期待せずにはいられません。

経済面では、こちらも米中貿易摩擦の波及を受けて減速影響が出てきた一年でした。それまで好調だった自動車、建設機械が調整局面に入っており、内外で設備投資の見送り感が強まっていることも懸念材料です。また昨年は消費税の増税影響もございました。こうした経済動向を受け、鋳鍛鋼業界においては、鋳鋼、鍛鋼共に2019年度の生産量は前年比でマイナスとなる見込みです。また、会員企業様の中から廃業の止む無きに至る企業様も出てきておりますことは、正に残念としか言いようがございません。会員企業の皆様もコストダウン等必死の努力を積み重ねておられるものと思いますが、資材高騰等、限界ギリギリの経営環境の中、品質の良さや安定供給といった価値をお客様に今まで以上に知って頂き、我々の置かれた状況に理解を深めて頂くことが喫緊の課題である、と感じております。

私は昨年５月の就任の際、鋳鍛鋼業界の発信力向上を重要課題に掲げました。鋳鍛鋼業は日本のものづくりに無くてはならない産業である、との自負を持ちつつも、我々の製造する製品の良さをお客様や世間の方々にもっと認知頂く、その為の活動にもっと注力していきたいと考えております。これまでも論文発表や技術講演会、賛助会員様と共同での生産性UPの視点からの共同研究、業界ＰＲ等の業界外の方々に働きかける活動に取り組んでまいりましたが、関係省庁等との連携をはかりつつ、例えば鋳鍛鋼会として他業界の展示会等へ出展し我々の製品の品質の良さを強くアピールする等の新しい取り組みに着手して行きたく考えております。

この他に、従来より重点課題としておりました ①国際競争力強化の為の技術革新·情報収集 ②若手·中堅の人材育成·教育 ③タイムリーな市場等の動向調査 ④安全活動·環境エネルギー活動の活性化、といった取り組みも引き続き積極的に活動推進してまいります。とりわけ人材育成に関しては、昨年大学の協力を頂きリーダー育成研修を実施致しましたが、こうした取り組みを強化していきたいと考えておりますので、当会の活動へのご理解を賜り、積極的なご参加をお願い致します。

昨年はラグビーワールドカップが開催され、日本は予選プールを４戦全勝で勝ち抜き、初のベスト８進出を果たしました。代表チームの掲げた「ONE TEAM」の精神が代表チームを強くしたように、鋳鍛鋼業界が「ONE TEAM」として盛り上がっていくことで、皆様にとって今年が良い一年になっていくことをご祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせて頂きます。

一般社団法人 日本鋳鍛鋼会会長　森　啓之（株式会社神戸製鋼所　常務執行役員）