会長挨拶
年頭挨拶
新年あけましておめでとうございます。本日は年始の大変お忙しい中、多くの皆様にご臨席を賜りまして、厚く御礼を申し上げます。また旧年中、本会の運営に対しまして、ご協力とご支援を賜りました、会員各社の皆様に感謝を申し上げたいと思います。本年も引き続き、宜しくお願い申し上げます。
さて振り返りますと昨年も、政治・経済の両面において、実に様々な環境変化が起こった年だったと思います。国内ではデフレ脱却に向けた動きが、国を挙げた取り組みとなりました。政府が経済対策のみならず、民間企業の賃上げや取引価格にも積極的に指針を発信するのは前例の無いことであり、日本経済が負のサイクルから正のサイクルに変わるための新たなフェーズに突入したことを実感しています。
デフレからの完全脱却のためには、賃上げと経済成長の好循環を定着させることが肝要であり、我々鋳鍛鋼業界としても、賃上げに継続して取組んでいかなければなりません。しかしながら足下の日本経済は、成長を維持はしているものの、製造業・建設業など、鋳鍛鋼業界にとっての主要産業は低迷が続いており、経営環境は厳しいと言わざるを得ません。
加えて戦争が激化し、グローバル社会の分断とブロック化が一層進みました。そして自国優先の保護主義が台頭し、自由貿易が歪み始めています。アメリカの政権交代はこの動きを更に助長するリスクがあり、全世界が警戒しているのはご案内の通りです。また世界の脱炭素化に向けた動きも、自動車の電動化が停滞するなど、より複雑化し始めました。
この一年で起こったこれらの変化は、不確実性を高め、これまで以上に市場の構造を大きく変えていきます。先行きが非常に不透明な今年は、我々にとって本当の意味での正念場になるのではないかと思います。
このような環境下で、まずもって我々が取り組まなければならないことは、事業基盤の安定化であります。サステナビリティーの確保は価値であると、これまでも申し上げてきたところですが、賃上げを含む人への投資と、製造基盤への投資を継続させること、そしてその財源となる収益をしっかり確保することが、とても重要になります。
賃上げが進み、様々な製品やサービスが値上がりした昨年ですが、特に中小企業においては需要が低迷する中での競合を案じ、値上げが十分にできなかった事例も多く、我々鋳鍛鋼業界も例外ではなかったと認識しています。しかしそれではその会社だけでなく、サプライチェーン全体が脆弱化することになるため、日本経済が強くなりません。
今年も諸コストが上昇する構造が続きます。勿論自助努力は欠かせませんが、社会を成長と賃上げの好循環に乗せるためにも、サステナブルな供給体制を維持するためのコストはサプライチェーン全体で負担するべきであることを、粘り強く求めていきましょう。我々鋳鍛鋼会としてもその必要性を継続して発信していきたいと思います。
その一方で、お客様に理解して頂き、我々の存在価値を認めて頂くために必要なことは、技術先進性のあくなき追求であります。鋳鍛鋼業界が支えている産業の広い裾野に対し、「なくてはならない」と言われ続ける素形材を供給するために、時代の変化に応じた技術開発を推進することは、事業基盤の安定化と併せ、経営上の両輪になるものと考えます。
また慢性的な人手不足は、賃上げだけで解決するものではなく、生産性の向上が極めて重要となります。既に多くの会社がDXに取り組んでおられますが、生成AIの時代を迎えた今、あらゆる領域で抜本的な改革を追求することが求められていると考えます。私のような古い発想では追いつけない領域かもしれませんが、是非自らも変わる覚悟をもって取り組んでいきましょう。
そしてもう一つ、会員各社の皆様に是非お願いしたいのが、変革へのチャレンジであります。グローバル社会における分断の進行や、関税強化など通商政策の変更は、ある意味ゲームチェンジであり、昨日までの競争優位性が良くも悪くも一瞬にしてひっくり返る可能性があります。
海外で事業を展開する会社、直接輸出・間接輸出を問わず海外市場を対象としている会社は勿論ですが、国内市場を主戦場として事業を展開している会社にとっても、何らかの形でゲームチェンジの波が訪れようとしています。時流を読み、波に流されるのではなく波に乗るための変革に、是非チャレンジして頂きたいと思います。
今年の日本経済は、賃上げによる個人消費の拡大を中心に成長が続くと期待されています。私も是非そうなって欲しいと強く願っていますが、全く楽観はできないのが現実だと思います。しかしながら会員各社の皆様におかれましては、厳しい経営環境にあってもチャレンジする心を忘れず、蛇年に相応しい脱皮の年、再生の年とされますことを強く祈念申し上げます。
最後になりますが、会員各社の益々の発展と、本日お集まりの皆様のご健勝を祈念して私の年頭の挨拶とさせて頂きます。
一般社団法人 日本鋳鍛鋼会会長 小野田 謙一
過去の会長挨拶
令和7年(2025年) | 年頭挨拶 | 小野田 謙一 |
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令和6年(2024年) | 年頭挨拶(1月11日新年会にて) | |
令和5年(2023年) | 就任挨拶 | |
年頭挨拶 | 太田 大介 | |
令和4年(2022年) | 就任挨拶「力強い健全な業界へ」 | |
年頭挨拶 | 岩本 隆志 | |
令和3年(2021年) | 就任挨拶 | |
年頭挨拶 | 森 啓之 | |
令和2年(2020年) | 年頭挨拶(賀詞交歓会挨拶から) | |
平成31年/令和元年(2019年) | 就任挨拶(鋳鍛鋼業界の発信力向上に向けて) | |
年頭所感(賀詞交歓会挨拶から) | 天野 肇 | |
平成30年(2018年) | 年頭所感(賀詞交歓会挨拶から) | |
平成29年(2017年) | 就任挨拶(創立70周年記念祝賀会にて) | |
年頭所感 | 仲田 摩智 | |
平成28年(2016年) | 年頭所感 |