会長挨拶

年頭挨拶(1月11日新年会にて)

一般社団法人 日本鋳鍛鋼会会長
小野田 謙一

まずは元日に発生した能登半島地震でお亡くなりになった方々に対しまして、謹んでお悔やみ申し上げます。また被災された多くの皆様に対しまして、心からお見舞いを申し上げますと同時に、一日も早く安全で平和な日常を取り戻されますことを、心よりお祈り申し上げます。

震災の全貌がなかなか掴めず、胸の痛みが続く中、翌日には羽田空港で飛行機の衝突という、大変ショッキングな事故も発生してしまいました。非常に重く苦しい新年のスタートとなった訳ですが、会社経営に携わる一人として、安全と防災に正月はない、常に気を引き締めて取り組まねばならない、と意を新たにしたところであります。

さて当会の活動は、昨年5月のコロナ5類化以降徐々に正常化を図って参りました。会員の皆様には積極的な活動への参画とご協力を賜り、また本日もお忙しい中200名を超える皆様にご参集頂き、厚く御礼申し上げます。業界団体としての「一体感」と「存在感」を今後内外に一層示していきたいと考えておりますので、本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

昨年を振り返りますと、国際的にはロシア・ウクライナ問題に解決の糸口が見えないまま、イスラエル・パレスチナの紛争が未曾有の危機に発展しています。地政学リスクが増大し、国際社会の分断が一層進んでしまいました。経済面でも社会の分断がサプライチェーンを変え、コロナの沈静化と相反してインフレが進行し、日本経済も巻き込まれました。

このような大きな環境の変化はここ数年毎年のように起こっており、もはや何が起こっても驚かないような状況になっていますが、今年は日本経済が、30年来続いてきたデフレから脱却できるかどうか、それに向けた賃上げの動向とその後の金融政策が、我々鋳鍛鋼業界にとっても大きな変化点になるものと考えております。特に賃上げは会社経営上コストであり、実行はそうそう簡単なことではありませんが、我々は同時に人手不足という難題にも直面しており、労務対策は不可避であると受け止めなければなりません。

これを実現させるためには、会員各社がDXを含む抜本的な業務改革による省力化や効率化に取り組むと同時に、あらゆる産業向けに重要部品を供給する鋳鍛鋼業界として、事業を継続していくための適正なコストの負担を、サプライチェーン全体に認識して頂くよう、働きかけていくことが重要となります。日本鋳鍛鋼会としても今年は特にこの点に注力して参りたいと思います。

一方で、我々鋳鍛鋼業界の各社が今後も無くてはならないキーサプライヤーであり続けるためには、新たな技術開発にも取り組んでいくことが重要です。賃上げという人への投資と並行して、次世代に向けた弛まぬ研究開発への投資を進めることが、顧客にとっても社員にとっても、より魅力のある会社となるためには必要であり、それが真のサステナビリティーをもたらすものと信じています。

会員各社の皆様には、改めてものづくりに対する強い思いと、ゼロ番地としてのコンプライアンスの順守を誇りとして認識して頂き、環境の変化をチャンスと捉えて、変革に果敢にチャレンジして頂きたいと思います。

今年はアメリカが利下げに転じることが濃厚で、大統領選も控えています。その他の国や地域でもあちらこちらで政治的な節目を迎える見込となっており、世界の政治と経済は、今年もまた大きく変化することが予測されます。それを受けた日本経済も、不透明感は拭い切れないというのが事実ではありますが、賃上げが定着すれば経済は新たなフェーズを迎えることになると思われます。

鋳鍛鋼業界を取り巻く各産業の足下の需要動向は、正直あまり芳しくないというのが実態であり、更に震災で出鼻を挫かれた思いではありますが、今年は幾つかの明るいニュースもあります。3月には北陸新幹線が金沢から敦賀に延伸します。被災地の復興と経済活性化の起爆剤となることを大いに期待したいと思います。また7月には新紙幣発行やパリオリンピック開催と明るい話題が続きます。さらには2025年の大阪万博開催に向け機運が盛り上がれば、日本経済全体にも好影響が期待できるものと思います。

調べますと辰年は「活力が上昇し形が整う年」だそうですから、今年は会員各社のひとり一人が成長のマインドを持ち、目指すべきこと、やるべきことを明確化してチャレンジし、それを是非とも結果に結び付けて頂きたいと思います。

最後になりますが、会員各社の今年益々の発展と、本日お集まりの皆様のご健勝を祈念して私の年頭の挨拶とさせて頂きます。

一般社団法人 日本鋳鍛鋼会会長 小野田 謙一

過去の会長挨拶

令和6年(2024年) 年頭挨拶(1月11日新年会にて) 小野田 謙一
令和5年(2023年) 就任挨拶
年頭挨拶 太田 大介
令和4年(2022年) 就任挨拶「力強い健全な業界へ」
年頭挨拶 岩本 隆志
令和3年(2021年) 就任挨拶
年頭挨拶 森 啓之
令和2年(2020年) 年頭挨拶(賀詞交歓会挨拶から)
平成31年/令和元年(2019年) 就任挨拶(鋳鍛鋼業界の発信力向上に向けて)
年頭所感(賀詞交歓会挨拶から) 天野 肇
平成30年(2018年) 年頭所感(賀詞交歓会挨拶から)
平成29年(2017年) 就任挨拶(創立70周年記念祝賀会にて)
年頭所感 仲田 摩智
平成28年(2016年) 年頭所感